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2016年6月25日の早朝に

ネットで得る山のような情報と、手元の研究計画書を前に、寝不足の頭で、
私は今回の国民投票の結果が議会で覆ることを、心の片隅で期待している。
それは、民主主義と民意に対する最大の裏切りであり、
そのような発想自体、また私を凍りつかせるものである。

私の先生は、911を前に、対話の可能性が暴力によって打ち砕かれたことへの絶望をどこかのエッセイに書いていたはずだが、
今、私は、対話の可能性が暴力によって「さえ」でなく(コックス議員の殺害はほんの10日ばかり前のことだ)、
極めて「民主的な」手続きによって、粛々と崩されていったのだと愕然としている。

それでも、と言葉を重ねることがいずれ、そう遠くない日に出来る日が来ることを願う。
今は少し休みたい。
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『不変の価値』2012/11/23

『不変の価値』2012/11/23

これは劇評ではありません。一観客の、記録にも感想文にもならないようなものです。
(深夜に、公募三演目連ちゃんマラソンを勝手に寿ぎワイン飲みながら書きました。
カッコ付き文が多いのは私のヘタレ具合を端的に表しています。後日消すかもです。
えー、すいません(何をや)。)
というエクスキューズを前ふりに。

 ひとまず、私が観たものと、私がやったことについて書いておきます。
 作品前半部は、チケット代から返金された500円を対価に、観客が俳優に「演出」を付けることができる、というものでした。俳優は決められた台詞を読み、演じる。観客はお金を払うことで、台詞の読み方やからだの動きに対する指示をする(どこまでを許容するか、谷氏からの「演出指示」があったかは不明)。演出タスクは箇条書きに舞台上に表示され、原則として俳優は(たとえ相反する指示であっても)全て応えることが要求される。
 十数個目の「演出」で、ある観客が「動けないように俳優の足を縛る」という指示をだしました。次いで、縛るものがないという事態を受け、演出の谷氏が「テープを舞台上に置く」という指示を出す。俳優はそのテープで足を縛り、演技を続けた。それはとても暴力的な光景でした。
 次の演出募集のタイミングで私は挙手し、まず次のように司会役の女性に尋ねました。「すでに出た演出指示を取り消すことは出来ますか?」「可能です」という返事だった。「では、前に出た二つの指示を消してください」と、私は要求しました。「それは出来ません。演出できるのは一つの事柄のみです」との返答。それでは、「テープをとってください」と私は告げました。
 この時、舞台上に出た箇条書きのリストの最新のタスクは「↑の演出を取り消す」となった。当然、私は彼の足を解放することを意図して先のような言葉を述べたし、他の観客もそれを理解していただろうと思います。
 だが、俳優はテープを手に取りさらに足に巻きつけた後、そのテープを舞台わきに投げ捨てました。司会役の女性が止める。それは演出とは違うじゃないか、と。だが、彼の行動は正しい。「↑の演出を取り消す」の矢印の先にあったのは「テープを舞台上に置く」だったからです。
 誤読がどこで始まったのかわかりません。司会者と私とのやりとりか、リストを入力していたスタッフの言葉の取り違いか。ただ、はっきりと私にわかるのは、あの俳優は意図的に「誤読」をしていたということです。
 といってもその直観が確かなものとなるのは、少し後の場面でした。舞台監督から「足のテープを外す」という演出が出たのです。(それはおそらく純粋に安全面からの配慮であり、にもかかわらず彼もまた500円を払って指示を出していた。)その時例の俳優はこう言いました。「僕がこれやってたいんです。」
 その時私は、開演前に表示されていた、『資本論』の一節を思い出しました。(えーと、教養のない私の部屋には今参照できる本がないのですが、だいたいの感じで言うと)つまり対価を払う人間が、取引の対象に対して暴力を振るうことが可能だということに、「誤読」と私が呼んだ彼の行為が、その「暴力」から逃げる手段であったということに気付くのです。資本経済、労働と対価の関係が捻じ曲げられる瞬間を見たと思ったのです。そして、私はその戦略がありうることに全く無自覚に、彼をテープから「解放」しようと思ったのです。私が、暴力的な光景を観たくないゆえに、彼を守ろうと、おこがましくも思ったのです。たった500円で。

 自己弁護も、させてください。つまりこの一連の舞台と観客のインタラクションは、一観客がいかに面白い演出、美しい演出を付けられるかという演劇的な批判性に軸足をおく試みでも、また大喜利のように「ウケる」演出を付けることができるか、というバラエティ番組のようなゲームでもない(全く、とはさすがにいいませんが←チキン)。金銭を介し、他人に、何を、どこまで要求することが出来るか、という経済原理が問われているのです。恐ろしいのは、これが舞台上で行われることで、だからもし演劇的な批判があるとすればまさにこの点です。
 つまり、「腹切ってください、ガチで」という要求は、ここで成立するのでしょうか、という問いです。それは500円には見あわないかもしれません、死ぬから。でも、「腕を切ってください」「泥を食べてください」「互いに罵倒してください」「おしっこしてください」は、どうでしょう。(ものによっては、参照先になる価格基準があるでしょうか。)舞台の上の政治性は金銭を介すことで変容する可能性があります。あるいは、お金を払えばという点に焦点があるのなら、数千万、数億だって積むから「タイタスアンドロニカスをガチでやってください。つまり、共演者を殺してください」という要求もあるかもしれません。そういうものこそ演劇的だと言う人はおそらくいるでしょう。
 しかし私は、このような暴力的な手段によって美しいもの、面白いものを見たいとはあまり思いませんし、俳優が自らを再起できないレベルで傷つけることで政治性を生むさまを、少なくとも500円を渡されることで、観る覚悟はありません。(という物言いが大変言い訳がましいのは重々承知です。)
 だから、「足を縛って」という演出に、私は反対します。それはいずれ俳優自身を深く傷つける要求にエスカレートしうるからです。そして、あのとき私がその演出に反論する方法は「その演出を取り消せ」という演出でした。
 そして「誤読」された。彼は自らの身体にかけられる負荷を(私の目には暴力と映るそれを)受け入れ、私の指示を事実上拒否しました。500円の価値はいくらか、という問題ではもはやありません。いかなる額であろうと、お金を介するやりとりがもつ政治と暴力がここで露わになるのです。そして彼の「誤読」の意図が(もしあるとすれば)この作品をより面白くすること、であれば、ここにこそ演劇の問題が問われるべきなのです。

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観たものリストの残り

諸事情あり、在英時につけていた観劇ノートを読み返していたところ、思い出がふつふつと湧きあがり、ほったらかしていたブログを久々に開くと観劇記録が2010年3月で止まってる。一年以上前なんですが、せっかく観たんだし、名前だけでもつけておこうと思い、本来の目的そっちのけで深夜にキーボードに向かうわたくし、カチャカチャ。右手には日本酒。
覚えてる所はメモや★もつけつつ、なのですが、実は大学での芝居の稽古が忙しくなった春先から、ノートをきちんとつけておらず、細部があやふやだったり間違いもあるかもです。ご容赦くだせい。
一年以上ぶりの更新、ひっそりと。

12/03 Hedda Gabler @ Theatre Royal Brighton
Rosamund Pikeがヘッダ役。オーソドックスな演出だった。

14/03 Dave Gorman @ Theatre Royal Brihgton
初デイヴ・ゴーマン。が、すいません、そんなによく覚えてない汗。本のが印象に残ってる。

03/24 Measure for Measure directed by Michael Attenborough @ Almeida Theatre
これめっちゃ面白かったんだよぅ。セットや美術は現代風、台詞はオリジナル(確か)。キャラクター解釈が新鮮で、イザベラが姉!というのが個人的にすごいハマった。「すまん死んでくれ」という潔さ笑。小心者っぽいインテリなアンジェロも面白かったなぁ。あと、ヴィンセンシオは神の位置にいる、という解釈がこの作品にはすごくしっくりきていた。人間的な神というキリスト教理解に私が馴染んでいるからかもしれないが。★★★★★

25/03 Waiting for Godot Directed by Sean Mathias @ Theatre royal Heymarket
Ian McKellen と Roger Rees が主演。ゴドーって笑えるんだ、と気付いた作品。観客がこの作品を「普通に」楽しんでるという事実に驚かされもしたなぁ。難解な哲学をベケットは必ずしも必要としないのか、と。とりたてて実験的な演出はなし。プロセニアムアーチのクラシックな劇場。ただ、俳優はべらぼーに上手い。Sirだしな、なんたって。★★★★

26/03 Macbeth by Cheek by Joel @ Barbican
こちらは実験性の強いマクベス。ダンスっぽかった記憶も。ただ、あんまり面白くなかったのかこれといって印象に残ってない・・・。

27/03 Jerusalem by Jez Butterworth @ Apollo Theatre
Mark Rylanceがオリヴィエ賞を取りました。Enronと同じく、ロイヤルコートから出世してきた作品。ザ・ドラマ演劇、3時間越えの大作。イギリス人的アイデンティティの在りかを交えながら、堕落した主人公が全てを失うまでを描く。ストーリーの重厚さもさることながら、この主人公の男は俳優冥利に尽きるほど演じ甲斐のある役。スラングの多さについていけないところもあったけど、Rylanceの演技を観るだけでも価値ありました。(中身は戯曲買って復習した)★★★★★

01/04 Habit of Art by Alan Bennett @ National Theatre
アラン・ベネット一回はみとかにゃ、で行きましたが、よーわからんかったです・・・。ウェルメイドプレイ、なんだがW.H.Audenとその周辺の人々という設定が、前提知識がないとしんどい。←英文学専攻(すんません詩はよくわからんのです)客席は年齢層高め。というか、学生(しかもアジア人)はすげー浮いた。

01/04 KONTAKTHOF With Ladies and Gentlemen over ´65` by Tanztheater Wuppertal Pina Bausch @ Barbican
(私この日マチソワしとるな。)ピナバウシュ追悼公演。78年初演の『コンタクトホーフ』をシルバー世代と、ティーンエイジ世代の二つのバージョンを作り上演。私が観たのはオーバー65の方。ロマンティシズムがゴールドシアター的な重厚さを通して感じられるのがとても素敵。肉体的な欲望のかすれた愛情が、アマチュア的身体と相まって、リアリティを持って表現される。後悔するのは、ティーンエイジバージョンも観たかったということ。たぶん、そっちでは精神的な未熟さと若い身体という逆転した恋や愛が見れたんじゃないかなぁと思う。★★★★

15/04 This is War by Idiot of Ants @ Komedia
秋に観たパフォーマンスの再演をもっかい観るっていうね。そろそろエジンバラに向けての試演を始めるかという頃です。が、この日は音響が(というかテク全般)めちゃめちゃ悪くて、残念。

16/04 My Arm by Tim Crouch @ The Basement
これ、全く記憶にないんだ・・・。検索して映像見ても、詳細が思い出せない。つまんなかったというわけではないと思うのだけど、なぜか。

*すません、いいかげん眠くなってきたので、いったん中断。余裕があれば、また続きを書きますです。

見たものリスト

2009年11月からここ最近まで。記録のためにも、とりあえず、リストアップだけでも。

08/10 The Seagull @ Croydon Warehouse by the Factory
授業のシアタートリップで。イプセンのかもめを、キャスティングとプロットのみ確認して、あとは即興で演じる。休憩込み三時間で、がっつりフルでやってました。どこまで稽古しているのか、ちょっと読めない。即興らしく、ベースはコメディテイストだけど、シリアスなシーンもきちんとこなす。小道具は観客からの借り物。あやしげなネズミの人形がかもめになってたけど、ニーナがそれをマジで気味悪がる。新しい笑 ★★★★

12/11 Striptease @ The Basement by Pere Faura
オランダ(だったっけ?)のコンテンポラリーダンサーのソロ。映像と語りの使い方があんまりダンスっぽくなくて面白かった。ところでこっち来てよく感じるけど、パフォーマー自身をそのまま舞台に乗せて語る/見せるというのは、ごくごくありふれた手法なんだろうか。日本じゃあんまり観ない気がする。★★★

20/11 The Pilots @ The Basement by Reckless Sleepers
★★くらいかな

21/11 Roman Tragedies @ Barbican Theatre
これ、すごく良かった。個人的にシェイクスピアものではベストな域に入る。観客との関係性の作り方、物理的な舞台の見せ方とかいろいろ面白い所は尽きないのだけど、とりわけ印象深かったのは、シェイクスピア悲劇を完全に政治劇として解釈しなおしてしまったところ。いずれ、別エントリーで書きたい。★★★★★

03/12 The Post Show Party Show @ The Basement.
★★★

12/12 Cat on A Hot Tin Roof @ Novello Theatre
キャストが全員黒人ってことで話題をよんでた作品。とはいえ、演出自体はわりとオーソドックスで、黒人俳優を使うという政治性はあえて押し出していない感じ。逆に言えば、そういうキャスティングにした意義って何だろうともちょっと考える。驚いたのは客席の黒人率の高さ。他のウエストエンドの芝居じゃちょっとないくらいに多かった。★★★☆

12/12 The Stefan Golaszewski Plays @ Bush Theatre
1人芝居2本立て。自伝的語りという体で、若いころ出会った女の子とのちょっとした恋の物語と、数十年後妻を亡くした老人としての自身を語る。エピソード自体はたわいのないものだけど、語りが上手くてぐっとひきこまれる。大げさかなと思う小道具の演出も(トランクから紙吹雪とかプレゼントボックスの山とか)、他の要素がシンプルだから上手く際立っててきれい。★★★★

16/12 The Forest @ Young Vic Theatre
子供向けのダンスパフォーマンス。ちびっこに混じってみてきた。パフォーマーのお一人は日本人の方で、ちょっと親近感。シンプルだけど、想像力かきたてるパフォーマンスで、美しい。短いけど、いいもん見たなーって気分だった。★★★★

16/12 1984 @ BAC by Blind Summit Theatre
オーウェルの同名小説の舞台化。なるべくシンプルな小道具やセットで表現を、という意図はわかるのだけど、かえってそれがチープに見えてしまった感が。あと、演技もちょいコメディに寄りすぎだったかも。良い意味での安っぽさを上手く使えば、グロテスクなイメージも作れると思うし、それはオーウェルの雰囲気にも合うと思うんだけど。★★★

19/12 Pied Piper @ Barbican Theatre by Boy Blue Entertainment
ハズレだった。ちょっと期待してただけに・・・。ハーメルンの笛吹きをモチーフにした、ヒップホップダンス。でも、あらすじをそのままなぞっただけの構成で、ひねりもなにもなかった。ダンス自体はかっこよかったけど。★★

19/12 Kim Noble Will Die @ Soho Theatre
別エントリ参照。★★★★★

25/12 The Wonderful Circus @ Laterna Magika
プラハにて。チェコ的シュールな世界全開ですごく良かった。映像のクオリティがめちゃめちゃ高いうえに、映像と舞台がぐちゃぐちゃに入り混じっていて、芝居とも映画ともつかない不思議な舞台だった。★★★★★

26/12 Cabinet @ Image Theatre
チェコ名物?ブラックライトシアター。思いっきり観光客向けの舞台。残念。★★

30/12 The pains of Youth @ National Theatre
Katie Mitchellの演出。20世紀初めのオールドファッションな舞台と、その世界を観察しているかのように行きかうスーツの人々。6人の学生たちの愛憎入り混じる関係が、現代からの視線という薄い膜が張られることで、一気に切なくなる。ストーリー自体も悪くないけど、この演出にひかれました。★★★★

31/12 Red @ Donmer Warehouse
★★★

02/01 Twelfth Night @ Duke of Yorks by RSC
★★★

14/01 Oper Opis @ Barbican Thatre by Zimmermann & de Perrot
★★★★

16/01 La Clique @ Roundhouse
良い意味でチープなサーカス。ストリップショーがすてきだった。★★★★

19/01 Spike Milligan's Adulf Hitler @ Theatre Royal Brighton
だからこの劇場とは相性悪いんだってば。★★

22/01 Trilogy @ Barbican Theatre
これはいずれ別エントリーで。フェミニズムをテーマにしたダンス。全然嫌味がなくて、すごく気持ちいいステージ。★★★★★

30/01 The Caretaker @ Trafalgar Studio
ジョナサン・プライス!★★★☆

09/02 My Stories, Your Emails @ Barbican the Pit
別エントリー参照。★★★

12/02 11 and 12 @ Barbican Theatre
Peter Brook演出作品。でも、いまいちピンとこなかった。小道具の「見立て」とか、すでにいろんな人がさんざんやりつくした手法だよなと。野田さんとかさ。もちろん、彼がその始まりを作った人ではあるんだけど。今、あえて見る必要はないのかもしれない。いやそれでも、伝説の演出家をみることができて、よかった。★★★

27/02 Enron @ Noel Coward Theatre
近未来っぽい演出が好み。不正を隠しながら上り詰める企業ってイメージにあっていると思う。でも後半、どんどん落ち目になっていく部分は、カタストロフィもなく、ずるずると終わっていく感じで、あんまり気持ち良くない。(まぁ実際ダメになる企業ってそういうもんだろうけど)★★★★

05/03 The Elephant Vanishes by SUDS
うちの大学の演劇部の舞台。ツイッターに載せた感想は以下。★★☆
村上春樹の持ってるいろんな要素が良くも悪くも誇張されてるような・・・。全部虫めがね通して見せられた感じ。変に解釈加えるより、素直にそのまま舞台化した方が良かったんじゃないかなぁ。あと、村上春樹はユーモアあるけどコメディにしちゃだめよなと。なぜ人は苦しくなると笑いに逃げるのか。あぁ、この人上手くないんだなってのがすぐわかる。

Kim Noble Will Die

19/12/2009 @Soho Theatre

感想を書こう書こうと思いつつ、もう2カ月以上経ってるー。記憶が薄れつつあるので細部が結構あやふやですが(だもんで、記憶違い大いにありますよたぶん)、それでも大変に、いろんな意味で、ショッキングな舞台だった。

鬱、自殺、セックス、自傷、そういった過激な要素が次々と繰り出されてくる。ペニスもろだし程度じゃ笑って流せても、顔面に小便を浴び、両腕を切り刻み、ドッグフードを食い、自慰をし、と次第にエスカレートしていく彼のパフォーマンスの中には、単に悪趣味なコメディだとしてほうっておけない重さがある。死にたいんだ、と言いながら暴力的に振る舞うNobleの姿は、「どこまで」生きることができるんだろう、という逆説的な問いかけのようだ。答えが見つからず、極端な方へと走るのは、欲しいものが手に入れられずひたすらに暴れる子供のようで、ともすれば幼稚だとさえ言えるのかもしれない。ええ年したおっさんの自慰行為を見せつけられるのは、えぐい。それでも席を立てないのは、彼がコメディという手法の中で必死に隠そうとしただろう切なさをどこかで嗅ぎ取ってしまったからだ。
過激なパフォーマンスは、なにも彼自身が行うだけにとどまらない。観客さえも巻き込んでいく。精液と思しき液体の入ったプラスチックケースを配ったり、観客の女性を理不尽に退場させたり、客から受け取った紙幣をシュレッダーにかけたり。ケンカ売ってる以外何物でもないのだけど、そうして作りだそうとするステージの上の彼の孤独さは、どこかで誰かと関わりたいという願望のように思える。きっと、そう受け取られるのは不本意だろうけど。
幕が下り、拍手なんぞいらん、ただ笑って帰ってくれればいい(いや、怒って席を立ってくれるくらいがいいのかもしれない)とだるそうに手を振るNoble。こういうとき舞台は残酷だから、そうしたそっけなさだってパフォーマンスになってしまう。えげつなさにひきつりつつ笑いながら、いびつで過激な形でしか自分を表現できない彼の切なさを愛しいと感じた。